Treatment and risks
厚生労働省の医療広告ガイドラインでは、診療に係るリスクや副作用を詳しく情報提供することが求められています。どのような治療を受ける時でもリスクのない医療はなく、治療にあたりリスクとベネフィットに関して考慮検討を行いますが、患者さまにおかれましては下記例示のリスク・副作用が予期せず起こりうることをご理解いただいた上で、矯正治療を開始いただくようお願いいたします。治療において、歯の移動し易さ・移動可能な範囲に生理的な個人差がありますが、痛みやリスク・副作用についても同様です。もちろん、すべてのリスクや副作用が必ずしも生じるわけではありません。
・歯根吸収
歯の移動時、骨の中に埋まっている歯根は周りの骨を改造しながら骨中を動いていきます。この骨改造の過程で歯根の一部が溶けることがあり、これを歯根吸収と言います。歯根に一部吸収が生じても大抵は修復改造がなされるため、もともと極端に歯根が短い場合を除き問題となることはありませんが、途中のレントゲン撮影などで進行性の歯根吸収が認められた場合は治療方針を変更する事もあります。尚、レントゲン撮影にて明らかな歯根吸収として認識できるのは数%程度です。 歯根吸収について詳しく
・歯髄壊死
著しく歯列から逸脱した歯や複数回治療した歯は、神経血管が弱くなっている傾向にあります。歯の移動によって血管が切断され歯の変色を起こす事がごく希にあります。歯髄壊死が生じた場合には一般歯科での根管治療が必要になります。 歯髄壊死について詳しく
・歯肉退縮
歯を支える骨(歯槽骨)が見た目以上に少なかったり厚みが薄い方では治療過程で歯肉が下がる事があります。また、それによりブラックトライアングルという隙間が目立ってくる可能性があります。 歯肉退縮について詳しく
・長期的には後戻りする可能性
治療後は、必ず保定装置(リテーナー)といった歯並びを維持する装置を使用していただきます。特に治療後半年はしっかり使用できない場合、早期に後戻りが生じます。また、歯並びは一生にわたり動き続けており、長期的みると治療した歯並びは少しずつ動き、変化していきます。 後戻りについて詳しくは
・治療中に痛みがある
個人差はありますが、矯正治療に痛みがあります。歯の移動に伴う痛み・装置が頬や舌に擦れることによる痛み・歯肉炎の痛みなどです。大抵は次第に慣れてしまいますが、長く痛みが続く方もいらっしゃいます。 矯正治療中の痛みについて
・食事がしづらい
矯正装置が装着される事と、歯列が動く事により噛み合わせが変わるため、治療中は食事を取るのが大変です。また、マウスピースなどの着脱型の場合でも食事前に外す手間がかかります。ワイヤー型の場合は、矯正装置につまるため、食事後はお手洗いに行く必要があります。 矯正治療中の食事について
・話しづらい
治療中は口の中に必ず、矯正装置が装着されます。会話が伝わりにくいというよりは、話しづらいのでイライラする事があります。慣れるまで期間がかかる方の場合、人前で話すのが億劫に感じてしまう方もいらっしゃいます。 矯正治療中の発音について
・修復物の再治療
虫歯を治した後の接着した修復物に、矯正治療中もしくは治療後にやりかえが必要になる事があります。矯正治療中や治療後は、治療前と噛み合わせが異なるため、修復物が破損してしまう事があります。再治療は、矯正治療の進行度とのバランスをみて一般歯科で行なっていただく必要があります。 具体的な修復物の破損事例
・顎関節症の一時悪化
顎関節症は「関節雑音がある」「口が開けにくい」「痛みがある」といった症状です。矯正治療は年単位の治療ですので途中、顎関節症が発症する事があります。その場合、一時的な治療中断もあります。 顎関節症について詳しく
・矯正装置の誤飲・誤嚥
接着型の小型装置を使用する場合は、必ず外れてしまうリスクがあります。医院での処置中や、食事などの日常生活中に、外れてしまった装置を誤って飲み込む事もあります。ですが、通常はそのまま排泄されますのでご安心下さい。また、ごく稀に気管の方に入る事もあります。この場合は誤嚥と呼び、救急医療の受診が必要になります。 矯正装置がよく外れる方
・口腔衛生状態の悪化による虫歯
歯磨きが悪いまま、固定式の矯正装置をつけ続けると虫歯のリスクが上昇します。中高生の患者さんで通院状態も悪く、指導後も歯磨きに改善が認められない場合は、多くの虫歯が発生してしまう事があります。状況によって治療の中断をご提案する事もあります。成人の方の場合は歯周病悪化のリスクがあります。 虫歯のなりやすさ
・思春期性の成長による下顔面の変化
成長期のお子さんの場合、下顔面の成長は12歳以降にピークを迎えます。女性の場合は15歳、男性の場合は18歳前後まで成長 があります。それに伴い下顎の成長が認められます。これにより治療中・治療後に受け口傾向や非対称の悪化がみられる事があります。顎の形は矯正治療単独で改善を目指す事はできないため、手術を併用した矯正治療をご提案する可能性もあります。 手術の必要性
・口呼吸や低位舌など悪習癖の影響
矯正治療を受けていなくても歯は常に動き続けています。歯は日常生活で使用しているだけでなく、口のま わりの筋肉や舌からも力を受けています。口呼吸や低位舌など悪い習慣は、治療の進行を遅めたり、長期的な後戻りを起こします。悪習癖が大きく関与している空隙歯列・開咬症状は特に治療後の管理が難しいと言えます。 口呼吸・低位舌について
・自己管理や協力が必要
マウスピース型装置だけでなく、ワイヤー型装置などの固定式装置でも、治療の終盤には顎間ゴムと呼ばれるような着脱式の装具を自己管理で装着していただきます。ですから患者さんの治療への協力度によって、治療期間が変わってきます。もちろん、予約を取って時間通りに通院してもらう事も大切です。 治療期間について
・矯正治療を始める事による精神的な負荷
個人差はありますが、見た目・痛み・会話しづらさ・装置装着による粘膜感覚の変化などにより、精神的にストレスを感じます。また、治療はすぐに終わるわけではありませんので、「ずっとこの状態が続くのか」とプレッシャーで今までなかった体調不良が出る方もまれにいます。治療の中断はいつでもできますのでご相談下さい。 矯正治療の中断場合
・矯正治療を行う事による拘束
矯正治療中は、同じ医院の定期的な通院が必要になります。各医院で異なった治療方針を立てていますので、転居があった場合は、全く同じ条件で治療を引き継ぐ事ができません。また経済的にも負担が増しますので、転居の可能性が場合は、そのリスクをご理解いただいてから治療を行います。 また、治療中に一般歯科診療を受ける場合や、頭部の医科領域の診察を受ける必要がある場合は、矯正歯科医院と連携が必要になります。受診前に来院いただき、各種報告書を作成する必要があります。 矯正治療を始める前に環境を確認
・歯列咬合改善には限界がある
矯正治療は自由に歯列を動かせるわけではなく、一定の骨格や歯茎の条件の下で個々に合わせた医学的見地からに正しい咬合を作る治療になります。ある程度は、患者さんの希望を盛り込み治療計画を立てていきますが限界もあります。患者さんの感じ方によっては、治療終了後も歯列咬合が改善していないと感じる事もあります。 歯列矯正治療の失敗とは?
・完全にクリーリングオフができない
矯正治療を契約し矯正装置を作成もしくは発注してしまった場合は、患者様が様々な理由で治療開始せず、契約を破棄してもキャンセル料が多少かかってしまいます。治療方法にもよりますが、治療費の5〜25%程度発生いたします